Human Development


第 4 回 発達科学シンポジウム

発達科学の基盤形成のための国際研究集会
「知のネットワーキング: その可能性とストラテジー」


講演「文化資本と内生的成長」

西山賢一 (埼玉大学)


概要

私たちはいま世紀の曲り角にいて、さまざまな困難な問題をかかえている。地球環境の問題、カジノ化する資本主義の問題、不安定な通貨の問題、世界の人口問題など。そうした困難は共通して、経済学のテーマと深く関わっている。いま経済学の活躍が期待されているのである。ところがもう一方で、多くの人たちが経済学に落胆している。地球環境の問題を引き起こしたのは、当の経済成長そのものだったのではないか。1998 年の秋に空前の危機を招いたアメリカのヘッジファンドには、ノーベル経済学賞をもらった研究者たちが深く関与していた。この象徴的な事件は多くの人たちに、経済学の理論はむしろ経済を混乱に陥れているのではないか、という危惧を広げた。

経済学への期待が大きい一方で、経済学への落胆もまた大きい。これが経済学のかかえている深刻な問題である。ここでは、経済学を基礎から見直して、地球環境と共生していけるような、そして永続した発展が可能であるような、経済の仕組への手がかりを求めてみたい。

そのために、経済成長を可能にしてきた資本というものを見直して、新しい資本論を生み出すという課題を提案してみたい。知識資本、人的資本、文化資本といった形のない資本に重点が移っていることに注目し、また経済の基礎を支える自然資本について論じてみる。マクロ経済学の内生的成長理論が手がかりを与えるはずである。それは学習や知識の蓄積が収穫逓増を可能にし、持続可能な経済成長を展望させてくれる。そのうえで、「モノは慎ましやかに、サービスは豊かに」という新しいタイプの経済の豊かさが、どうしたら実現可能であるかを考えてみたい。


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