Human Development


第 5 回 発達科学シンポジウム

講演「多声の空間」

平山洋介
(神戸大学発達科学部)


概要

ある公営住宅団地の再生事業を素材として「多声の空間」について考える。 私自身が 10 年間にわたって関与してきた事業である。 この団地は貧困者の集中、著しい老朽・劣化、環境の荒廃など、深刻な問題が生じていた。 これに対処するために、住民・行政・専門家のワークショップによる計画・事業が発想され、実施に移されてきた。 ワークショップの場面は住民=静かな受益者、行政=権限を備えた管理者、専門家=技術の権威、という役割分担の境界を動揺させ、多声を迎え入れる。 再生事業の実験は開放性と偶発性に満ちたプロセスをつくり、新しい可能性を備えた空間の生成を促した。

建築の技術は構築すべき空間の定義を純化して絞り込み、それを達成するための「予定どおり」の社会関係を要請する。 しかし、空間を特定の定義のもとに自動的に回収しようとする方法は間違っていると思う。 多声の緊張関係にどうやって向き合うべきか、という問題について考える必要がある。


発達科学シンポジウム 第 5 回

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