Human Development


第 6 回 発達科学シンポジウム

招待講演

遺伝子操作と人類の未来

Lee Silver
(プリンストン大学)


概要

生殖および遺伝子テクノロジーの飛躍的な進歩によって、もうすぐ親は生まれてくる子供が本来は持っていなかった新しい遺伝子を持って生まれて来るように胎児を強化できるようになります。 このテクノロジー上の「生殖遺伝学」への飛躍は、人類の根本的な性質を変え得るので有史以来の最も重要な飛躍となります。 人の遺伝子を操作することについて科学と倫理の両面から大きな議論が沸き上がっています。 安全に利\用できる程にこのテクノロジーを発展させることは将来にわたっても不可能であると主張する科学者もいます。 多くの生命倫理学者は、仮に安全面の問題が解決されたとしても、それが病気の克服を目的とするものであってさえ、子供の遺伝子を操作することは許されないと信じています。 私は今日の科学の進歩具合からすると将来は技術的に可能であることを信じて疑いません。 また生命倫理学者の反対意見の大部分は論理的に矛盾しているかあるいは狭い宗教思想に基づいていると思います。 私の考えでは、基本的な倫理上のジレンマは個人の自立性と社会の平等性との間の対立にこそ根ざしています。 社会の平等性の原理を押し進めると、富める家族とそうでない家族との間のギャップを極端に大きくするようなテクノロジーの使用を禁止する社会となります。 しかしアメリカでは個人の自立性を尊重してプライベートな問題には介入しないという原理が主流となっています。 アメリカの市場駆動型の受胎産業は、その商品レパートリに生殖遺伝学を加えることで経済的に大きく発展すると予想されます。 このテクノロジーを個々に適用する限りにおいては社会全体に大きく影響することはないと思われます。 しかし遺伝子強化が何世代にも渡って蓄積していけば、富める者とそうでない者との間のギャップが想像もできない程に広がって、人類としての共通性が元に戻せない程に断ち切られてしまう可能性があります。


発達科学シンポジウム 第 6 回

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