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発達科学シンポジウム「大阪湾 ―その水質と埋め立て―」その2

もくじ
  1. 瀬戸内海における内分泌撹乱化学物質TBT、TPhT
  2. 生活環境からの汚濁発生源抑制 ―台所排水対策―

瀬戸内海における内分泌撹乱化学物質TBT、TPhT

図
図: 瀬戸内海における海水中のTBTの分布 / 田尾博明等, 環境化学, Vol.9, No.3, pp.661-671, 1999

平成16年2月7日 (土) 発達科学部大会議室で開催された「発達科学シンポジウム: 大阪湾 ―その水質と埋め立て―」で述べる予定でありましたが、時間の関係で割愛し、また要旨集にも記載しなかった「瀬戸内海における有機スズ化合物」に関する研究を紹介します。

トリブチルスズ (TBT) やトリフェニルスズ (TPhT) は環境ホルモン (内分泌撹乱化学物質) として問題になっている物質で、船底防汚剤や魚網防汚剤として、二枚貝、フジツボ類、海藻などが船底や魚網に付着するのを防止するために大量に用いられてきました。有機スズ化合物の毒性は強く、1ppt (1ng (1gの10億分の1) / L) のTBTを含む海水中でイボニシ (巻貝の一種) を飼育すると3ヶ月で正常な雌の90%に異常が発生することが報告されています。現在、TBTやTPhTは日本ではほとんど使用されていないはずですが、依然としてこれらの化合物が瀬戸内海で検出されています。瀬戸内海におけるTBTの分布を図に示します。TBTの濃度は大阪湾から別府湾に向かうにつれて徐々に低下しています。この原因として、TBTを含有している塗料を施した外国船舶の通航量 (瀬戸内海西部に比べて東部が多い)、外洋水 (豊予海峡から瀬戸内海に流入している) との交換量などが考えられています。

(齊藤 惠逸: 自然環境論講座)

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生活環境からの汚濁発生源抑制 ―台所排水対策―

水質保全の今日的課題

従来、内海や河川の水質汚染に対しては、有機物 (BOD、COD) 除去対策が中心でしたが、現在では、窒素 (N)、リン (P) 除去対策への変換が必須の課題となっています。例えば、瀬戸内海におけるCODの総量規制 (1973〜) が功を奏し、陸からの有機物流入量は減少しました。しかし、栄養塩類であるN、Pが流入するので、植物プランクトンが増え、光合成により海域内部の有機物量は上昇してしまうのです。N、Pの主な発生源として、生活排水、工場などからの排水、下水道終末処理場、浄化槽 (一般の下水処理場でのN、P除去率が低い)、農地への多施肥、家畜排泄物が挙げられます。

発生源抑制の立場からの対策を ―台所排水対策の必要性―

表1: 洗水排水による推定汚濁負荷量 / 白杉 (片岡) 直子ほか: 日本調理科学会誌, Vol.36, 130-138 (2003)
表1

もっとも身近な生活排水に対しては法的規制がないに等しいのが現状です。生活排水の有機汚濁量 (BOD) の約40%が台所排水です。わが国の台所排水の特徴は、主食となる「米のとぎ汁」の汚濁負荷量が大きい、食生活の欧米化による「油」の排出量の増加にあります。したがって、家庭でこれら2つに対してとりうる対策を検討してみました。洗米排水対策: 9割の人が洗米排水を台所の排水口に直接流すことを前提に、米の洗い方の違いによる汚濁負荷量の比較実験を行ったところ (表1)、日常的な洗米方法として、軽い混ぜ洗いですませることが排水の汚濁量削減に効果的であることが数値で示されました。食用油対策: 油を直接台所から流す人は非常に少ないものの、食器や鍋に付着した食べ物の汚れを拭き取って洗浄する人は30〜40%であり、これらに混じった油がかなりの量排出されていると考えられます。食器汚れのふき取りの励行が効果を上げると考えられます。また、生ゴミディスポーザーは使わないことです。

(白杉 直子: 生活環境論講座)

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