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里山管理と市民活動

武田 義明

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吹田市紫金山公園での里山管理
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満開のコバノミツバツツジ

近年、里山が管理放棄され、遷移が進み常緑樹が繁茂して林床まで光が届かなくなり、林床の植物が生育できなくなってきている。さらに、特定の種のみが繁茂するようになり、結果として、全体の生物多様性が低下してきている。そのような中で、地方自治体、NPO、自然保護団体、市民などが身近な自然の保全や回復を目標に里山管理を行うようになった。私が里山管理に関する講演を頼まれたのが、1998年で、大阪府吹田市で住民による里山管理が始まった頃である。吹田市は紫金山公園の植生管理をNPOの大阪自然環境保全協会に委託したが、保全協会は「紫金山みどりの会」を下部組織として立ち上げ、市民を募集し管理を始めた。私は、講演をきっかけとして公園の近くに住んでいることもあり、会長に就任した。この会はただ公園の植生を管理するということだけでなく、将来の植生のあり方を検討し方針を立てて行っている。その一つの目標として、コバノミツバツツジの保全・復活が挙げられる。紫金山は元々里山であったが、公園として残されたところで、ここの植生はその後管理されないまま置いておかれた。そのためアラカシ、クロバイ、ソヨゴなどの常緑樹が繁茂し、コバノミツバツツジを始めとする落葉樹が衰退してきていた。これらの常緑樹を伐採することにより、林床の光条件を改善し、コバノミツバツツジの復活を図った。それにより、今では春先になるとコバノミツバツツジが一斉に咲き、見事な景観をつくっており、吹田の名所の一つになった。もともと、この地はコバノミツバツツジが一斉に咲き、山を紫に染めることから紫金山という名がついたのである。一方で、ほとんど手を付けないゾーンも設定し、植生の多様化も図っている。これらの活動が認められ、2004年には吹田市から「吹田文化のまちづくり功労者」として表彰された。この会は保全協会の下部組織ではあるものの会員は必ずしも保全協会の会員ではなく、地域住民を中心としたものであり、また、若干吹田市以外のメンバーも加わっている。里山管理は、生物の保全だけでなく、会に参加することによって、地域住民の新しいコミュニティの形成ができるものと思われる。

私はその他に、神戸市環境影響評価審査会、高砂市環境審議会、三木市環境審議会、兵庫県文化財保護審議会、神戸市文化財保護審議会、西宮市文化財保護審議などの委員として、環境および文化財行政に関わっている。

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