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生産現場と直結した環境研究への取り組み

白杉 直子

社会貢献と言えるにはまだ早い気がしますが、将来、貢献に結びつくことを願って取り組んでいる、企業と共同の環境研究を紹介させて頂くことでお許し願いたいと思います。

わが国の水問題の現状として、窒素・リンによる水質汚染の軽減が喫緊の課題となっています。主な発生源は、生活排水、産業排水、畜産廃棄物、農地における過剰施肥などです。排水の場合、一般の下水処理場で窒素・リンが処理されにくい技術的な問題があることから、家庭や事業所からの流出をできる限り抑えるしかありません。この発生源抑制の観点に立ち、ある企業の協力を得て台所排水の水質汚濁に関わる実験をしています。良い結果にしろ、悪い結果にしろ、メーカーの技術開発などに反映させてもらうのが目的です。

写真
フィールドとしている愛知県東部の碾 (てん) 茶園の一圃場

農産物の生産性向上のため、農地に肥料を与え過ぎる傾向は先進諸国に共通しています。特に日本は過剰施肥であり、平成11年度に新たに地下水の水質汚濁に係わる環境基準項目に加わった硝酸性・亜硝酸性窒素は、調査した井戸の約6%が環境基準 (10mg/L) を超過しており、地下水の窒素汚染が広範囲に進行していることが明らかになりました。数年前から、環境意識の高い茶農家や緑茶飲料メーカーの協力を得て、茶園をフィールドとした窒素溶脱の問題に取り組んできました。昨年からは、抹茶メーカーと共同で窒素溶脱問題の解決に向けて、抹茶原料である碾 (てん) 茶の有機栽培圃場における減肥プロジェクトに取り組んでいます。減肥により避けられないであろう抹茶の品質低下と、土壌中の余剰窒素による地下水汚染の軽減とを天秤にかけながら、ぎりぎりの努力をどこまで実践できるかを調べていきます。産学連携において私などが関われる環境研究は、製品の技術開発とは異なり利益にすぐに結びつくわけではありません。しかし、企業においてもまた社会的責任を意識した環境問題への取り組みが本格的になりつつあるようです。研究が生産現場と直結していることから学ぶことが多く、成果を反映させていけることが励みとなっています。

ほかには、本学大学院総合人間科学研究科HCセンターの伊藤篤助教授が担当する子ども・家庭支援部門の研究協力員として、児童館における子育て支援施設「ふらっと」の季刊紙に掲載の食に関するコラムの執筆と、本学部附属幼稚園の保護者が主催する子育て支援ワークショップでの講師を担当しています。また、日本調理科学会近畿支部評議員として第31回研究発表会開催 (於神戸大学、平成16年7月) の実行委員長を務めたこと、日本食品化学会誌の編集委員、いくつかの食環境に関わる講演会講師などです。

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