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「ぺぱっぷ」で国際協力!

太田 和宏

「国際協力」たけなわのご時世である。善き哉、善き哉。

問題は「国際協力」の中身である。軍隊を派遣してまでも「支援」「人道」とのたまうのは論外としても、やっかいなのは、人助けをしたい、貧しい子供を救いたい、といった純粋な善意に基づく支援活動でさえ、当事者の状況や社会条件を軽視して行った場合、むしろ弊害を招いてしまうことである。

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フィリピン訪問
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海辺のスラム

数年前より学生や社会人と一緒に「ぺぱっぷ」という団体をつくってフェア・トレードを中心とした「国際協力」活動を行っている。フェア・トレードとは公正な価格、適正な報酬、安全な品質を確保しながら生産者と買い手が多くの仲介業者を介さず行う取引きである。「ぺぱっぷ」では具体的にフィリピンのNGOに組織された貧しい農家やスラム住民によって生産されたドライ・マンゴーを買い取り、日本で普及している。

その目的は、主に二つある。第一に貧しい人々にモノやカネを与えて「援助」するのではなく、貧しい人々自身による生活改善の活動に「協力」をすることである。人々は「援助」を受けるではなく、ドライ・マンゴー生産活動に対する「報酬」を受け取る。ドライ・マンゴーが売れればそれだけ、生産者の生活が保証される。「ぺぱっぷ」としては貧しい人々のそうした自立への努力に協力するわけである。

第二の目的は、相互理解である。マンゴーを味わってもらうことを通じて、日本の一人でも多くの人に、マンゴー生産者の置かれている状況、フィリピン社会の現状、第三世界の問題、そしてそれらと先進国との関係について知ってもらう、考えてもらう。実際に、フィリピンの社会問題や、遠く離れたアフリカの飢餓でさえ、その原因の多くが日本を始めとする先進国に関連することが多い。欧米などでは、学校教育、マスメディア、NGO活動などを通じて第三世界の状況や問題はより多くの市民に共有されるようになってきている。対して、日本は未だしの感が強い。「ぺぱっぷ」ではドライ・マンゴーを手にしてもらったことをきっかけに、世界を知ってもらおうという魂胆である。セミナーや勉強会を開いたり、ホームページでさまざまな情報発信もしている。

もちろん、われわれの活動が「やっかいな国際協力」になっていないか、ならないかは常に留意する必要がある。国際協力、開発理論、国際情勢などの知識や視点は当然不可欠であり、「ぺぱっぷ」メンバーも常に勉強を怠らない。実践活動でありながら「学ばざるものは去れ」を基本としている。またフィリピンのNGOとも頻繁に意見交換をし、現地訪問なども行って現場をよくよく観察するよう努めている。

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ごみ山での生活
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セミナー

実のところ、私の専門はフェア・トレードでもなんでもない。もともとの専門はフィリピンの政治社会構造分析など、いわゆる「比較政治」である。少し領域を広げて、「開発論」にも取り組んできた。こうした研究にとりくみはじめた動機は、途上国の貧困問題を何とかしたいという、まこと以て単純なものである。フィリピンの政治構造云々を考えていくことがそうした問題に対する遠巻きながらの解答探しであると信じてはいるが、短兵急な性格の私は、こうした研究を多少それてでも何らか目に見える形での実践が必要だという思いにかられ、フェア・トレードに取り組み始めたわけである。

「ぺぱっぷ」に関わる社会人や、神戸大学のみならず様々な大学から集まる学生は、熱心であるばかりか、どうしてどうして仲々の才覚の持ち主が多い。国際協力といっても実際の活動になれば地道で目立たない仕事を重ねなければならない。輸入の手続き、販路の確保、イベント準備、そして見知らぬ人への働きかけ。たいていのことはメンバーに任せておいても充分機能するようになって来た。また活動を通じて、ひとりひとりが変わっていくのを見ているのは何とも悦しい。そういえば昨年から神戸大学生協の各店舗にもドライ・マンゴーを常設してもらうことになったが、これなども学生が自主的にとんとんと話を進めてくれた。今般、若いものの創造性と行動力には感心することしきりである。

活動を通じて、様々な人々とのつながりもできてきた。全国のいろんな大学の学生はもちろん、市民団体、NGO、マスコミあるいは自治体職員・企業人。多くの人々によって支えられているのだと認識すると同時に、何だか片手間ではできない状況になってしまったなと実感。いっそのこと夢に描いてきた研究機能を備えた大きな国際NGOにまでしてみようかしらん・・・。

こんな形で日本・フィリピンの愉快な「同志」らと、世に新しい流れをつくるという壮大な活動を、地道に、創造的・批判的に、そして当然のことながら楽しみながら行っている。

とまれ、いまだご賞味いただいておらぬ方には、是非に是非に「ぺぱっぷ」のドライ・マンゴーをお試しあれ。一口食めば、そこには常夏の太陽を存分に含んだ黄金の果肉につまりたる国際協力と平和の香りが一気に広がる。この美味なるドライ・マンゴー、貴殿貴女をいまだ見ぬ世界へといざなうこと請け合い!

「ぺぱっぷ」 (PEPUP) とは

People's Empowerment Partnership Upon Peace = 「平和と自立のためのパートナーシップ」の頭文字をとっています。Pep up!といえば英語で「がんばろう」という意味です。ホームページ: <http://www.ne.jp/asahi/pepup/home/>

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