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国際学術交流という社会貢献活動

小川 正賢

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海外との学術交流という社会貢献活動について述べてみよう。国際的な研究雑誌の論文審査や編集委員を依頼されることがある。これらは、ほとんどの場合、国内と同じ仕組みである。しかし、海外の大学には、日本と制度的に違う仕組みがある。

海外の多くの大学では、博士論文の審査に、当該研究領域の国際的な専門家を数名、外部評価委員 (あるいは、審査委員の一部) に任用し、彼らのレポートを参考にして最終的な合否判定を行っている。博士号の国際的な質の保証のためである。外部評価委員を受諾するとその博士論文が届けられ2週間程度で評価をする。飛び込みの仕事としてはけっこうハードである。外部評価委員といえば、海外の大学教員の昇格審査を依頼されることもある。任期付のAssistant Professorから、終身在職権 (テニュア) 付のAssociate Professorへの昇格の場合には、研究業績だけでなく、テニュアを付与するに足る「将来性」に関する評価も同時に求められる。一般に、外部評価委員には、教育活動に関する評価は求められない。それは、内部審査委員会のやる業務だからである。Full Professorへの昇格審査の場合は、その研究業績が国際的に優れているかどうかを判断根拠とともに示すことや、国際的な研究活動への貢献度、グラント獲得可能性などについて評価を求められる。このような評価の場合には、その研究者に関する膨大なデータが送られてくる。1ヶ月くらいかけて、じっくり評価をすることになる。

このような外部評価委員に任用されることは名誉なことであるが、その一方で、質の悪い評価をすると二度と任用されることはなくなる。外部評価委員としての仕事は、それぞれの審査委員会を経て当該大学、広くは学界全体から逆に評価され続けることになるから、自分の質を維持する上で非常に重要な社会貢献活動でもあり、緊張感のある活動である。毎年、各種の外部評価委員の仕事が舞い込んでくるうちは、質を認めてもらっていることになるが、ある日、ぱったりと仕事が来なくなると、それは、当該研究領域の最前線から遅れてきたことの証しになる。そうならないようにと、今もまた分厚い審査資料と格闘している。

日本でも外部評価の仕組みは、大学評価や各種グラントの審査過程に取り入れられてきているが、国際的な水準で外部評価が実施されることは少ない。しかし、世界に門戸を開くと宣言する大学では、大学・大学院教育の国際的な質的保証をするには、いずれこのような制度を導入せざるを得なくなるのではあるまいか。

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