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骨の健康と啓発活動加齢に伴う骨粗鬆症に関連して、自分の専門分野との接点を探っていくと、骨の強さとはという根本的な問題にぶつかりました。骨粗鬆症は、低骨量で、かつ骨組織の微細構造が変化し、そのため骨が脆くなり骨折しやすくなった病態と定義され、診断基準は骨密度の値で決められています。骨密度が低いと骨量は減少していて骨折しやすくなっているから注意が必要という感じですが、骨が折れるという力学現象は工学的強度と関係するもので、密度で評価できるのだろうかという素朴な疑問です。阪神・淡路大震災をきっかけに、生活や健康に関心が向き、何か役に立ちたいと思っていた頃でした。専門の振動を利用した計測と骨密度とを合わせて骨の強さを大まかにでも評価できないものかと、親しい人に協力してもらい細々と測定を始めました。まず可能性を検討してからのつもりでしたが、疑問を共有できる医師と出会えたこと、社会人学生や病院の職員の方など多くの人の協力で、わあっと測定の輪が広がり、年齢層ごとの指標の平均値や加齢特性が作れるほどのデータ数に達しました。多くの人と接触する過程で「骨の健康」に対する啓発活動の一助になったのかなと感じつつも、運動歴のアンケート調査や骨の画像解析への展開、測定協力者からの励ましの言葉など、貢献というよりも支援をいただいた方が大きいような気がしています。物を対象にしてきた私の研究生活の中で、社会と関わったのは初めての経験でした。その後、医師の移動で継続できなくなりましたが、専門分野をバイオメカニクスや人間工学へ移すきっかけとなりました。 私が関心を持った振動は、係数励振振動や自励振動といった特殊な原因で起こるタイプです。予期しない振動が起こるのは機械の病気です。振動の原因と発生のメカニズムや特徴を調べてデータベース化していくと、病気の治療や予防、そして「機械の健康診断」にも役立つでしょう。病気が完治したのと同様に、問題の振動の原因が明らかになって、発生しないよう設計されれば重要性も低下してしまいますが、それを解明した地道な研究への評価も大切です。日本機械学会論文集の査読委員を通算6年し、感謝状もいただきましたが、これもなるほどそうかと学んだ方が大きかった気がします。 |