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発達相談の臨床心理士として働いて

伊藤 俊樹

著者

このレポートでは、私が臨床心理士として臨床現場でどのように働いているかを報告したいと思う。神戸大学に勤務し始めて、私が臨床活動の現場として関わってきたのは、京都府京都市京北町の京北町保健センターの発達相談 (去年まで)、神戸市西区の岩岡中学校、大学院付属の心理教育相談室である。ここでは、特に発達相談の仕事について紹介したいと思う。

京北町の保健センターでは、基本的に就学前の情緒的に問題のある子供或いは発達面で問題のある子供とその親 (主として母親) の発達相談を行ってきた。ここでは、私ともう一人の臨床心理士が組んで一方が子供の、他方が親の面接を担当した。親面接では、場合によっては担当の保健士が加わることもある。子供の担当になった場合は、子供にプレイセラピーを行うが、これは遊びを通して子供に自己表現をしてもらい、その表現をこちらが受け止め理解することで心理的成長をはかろうとするものである。親面接では、親の子育て上の不安や心配など様々な感情を受けとめながら、子供にどう関わってゆくかを一緒に考えていく。ペースは月1回であるが、月1回の対応では難しいと判断したケースに関しては、付属の療育教室で週に1回の関わりをもってもらうようにしていた。

連れてこられる子供は様々であるが、私に自分の遊びを受容してもらえ、その遊びにつきあってもらえることが分かると、様々な遊びを通して自分のこころの中の世界を表現してくれる。時にそれは、私とのチャンバラごっこになったり、おままごとになったりする。チャンバラごっこでは、子供が抱えている怒りなどの感情が私に向かってぶつけられる。その感情を受けとめてチャンバラごっこにつきあってあげると子供の心に徐々に変化が生まれてくるのである。おままごとでは、例えば父親を離婚で失った子供が、私を父親にみたて私に料理を作ってもらったり、一緒に散歩したりするのである。そのような遊びを通じて満たされなかった依存欲求を子供は満たそうとするのである。子供たちの病理水準も様々で、半年程度の関わりで改善して終結する場合もあれば、数年間の関わりをもたねばならない場合もある。いずれにせよ私は子供たちから人のこころについて様々なことを教えられてきた。ここでの経験が今の私の臨床の基礎となっていると言える。

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