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家庭と地域をつなぐ子育て支援

伊藤 篤

1990年以降、親の子どもに対するマルトリートメントや親自身の心理的問題が原因で児童養護施設に入所する子どもの比率が増加し、彼らには心のケアが必要だと言われはじめました。そして、多くの施設にカウンセラーが配置されるようになりました。私自身も、専門的な支援とは言えませんが、メンタリング理論を応用して、学部生・院生が児童養護施設の入所児とかかわるというBBS活動を2001年4月より実践しはじめました。実践のなかで、親に対する予防的な働きかけが必要だと実感したので、予防的な子育て支援を展開したいと考えるようになりました。

写真
親と子のくつろぎ空間 ふらっと (六甲道児童館)

学部で開いていただいた「子育て支援シンポジウム (2003.9.30)」がきっかけで、2004年4月より六甲道児童館に、カナダのドロップインを参考とした「親と子のくつろぎ空間 ふらっと」を週に1回のペースで実践しています。近隣の子育て世代どうしが仲間づくりや情報交換ができることで1次予防を目指し、自然な形で育児相談に応じることで2次予防を目指しました。2004年度や約3000人 (約1500組) の親子が「ふらっと」を利用してくれました。

この実践をさらに大きく展開できる可能性が膨らみました。「ふらっと」の実践もひとつのきっかけになったと聞いていますが、2004年12月に神戸大学と神戸市灘区のあいだに包括的協定が結ばれ、これにもとづいて灘区役所旧庁舎に、大学院のサテライト施設「あーち」が2005年9月より立ち上げられたのです。これまで週に1回であったドロップインを火曜日から土曜日まで (10:30〜16:30)、週5日おこなえるようになりました。

ドロップインはあくまで基本サービスだと考えています。できるだけ多くの親子に「あーち」を利用していただき、さらに、ここで、彼らが各自のニーズに応じたサービスを選択できるようなシステムを構築することがこれからの私の課題です。このシステムのなかに、地域にいる人々が支援者として参画し、支援を受けた人々もやがては支援者になっていくということを期待しています。家庭と地域とがゆるやかな形で結びついた子育て支援の場を「あーち」で実現したいと考えています。

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